実店舗での日々の買い物からオンラインショッピングまで、いまや私たちの生活に欠かせないクレジットカード。
便利なクレジットカードですが、使う際に気になるのが利用限度額です。
確認方法や限度額を上げる・下げる方法、限度額を超えた場合はどうなるのかといった疑問点、さらに限度額が勝手に上がるケースなど、クレジットカードの利用限度額について詳しく解説します。
- 利用限度額はそのカードで使える限度額のこと。毎月使える金額ではない
- キャッシングやローンを利用した場合、返済しなければ限度額は元に戻らない
- カード会社に申し込めば利用限度額は変更できる
- 割賦販売法によって「支払可能見込額」が算出され、利用限度額はそれを越えることはない
それぞれのポイントについて、見ていきましょう。
カードの利用限度額とは何か
クレジットカードの利用限度額とはその名の通り、「クレジットカードで利用できる限度額」です。
勘違いされやすいポイントですが、「そのカードで毎月使える額」ではなく、「そのカードで利用できる額」です。
そのカードで毎月使える額ではないため、月をまたいだり締め日が過ぎたりしても、それによって利用限度額が変わることはありません。
クレジットカードには、さまざまな「枠」がある
クレジットカードにはどれも「ショッピング枠」「キャッシング枠」など「枠」が付いています。
画像引用元:カードご利用可能枠について|クレジットカードなら、JCBカード
カード会社によって呼び方はさまざまですが、大きく分けて次の3つの枠があります。
- ショッピング枠
- キャッシング枠
- 割賦枠
それぞれの枠についてみていきます。
ショッピング枠
ショッピング枠は、そのクレジットカードで「買い物できる金額の上限」です。
カードを利用してショッピングした場合、毎月の自動引き落としなどでそのカードの支払いを済ませないかぎり、ショッピング枠の金額も回復しません。
仮にショッピング枠が50万円で20万円使ったのであれば、ショッピング枠の残高は30万円です。
ショッピング枠の金額を50万円に回復させるには、使った分の支払い(例の場合、20万円)を済ませる必要があります。
キャッシング枠
キャッシング枠は、そのクレジットカードで「借りられる金額の上限」です。
こちらもショッピング枠と同様、一旦借りたお金は返済しなければ枠の上限額が戻ることはありません。
仮にキャッシング枠が30万円で10万円借りれば、残りは20万円です。
翌月になると勝手に30万円に回復するのではなく、借りた10万円を返済しない限り、30万円に回復することはありません。
次に説明する「割賦払い」のように分割して支払う場合、枠が回復するのにも時間がかかることになります。
割賦枠
「かっぷわく」と読みます。一括ではなく、リボ払いや分割払いなど「複数に分けて支払う際に使える金額の上限」です。
ボーナスの際に増額して支払う「ボーナス払い」も、これに含まれます。
こちらも他の枠と同様、一旦利用しますと、利用できる金額を回復させるには支払いを済ませなければなりません。
リボや分割の場合は一括で支払うわけではありませんので、その分、元の限度枠に戻すには時間がかかることになります。
またカード会社によっては、割賦枠を越えてリボや分割払いを利用した場合、翌月一括払いとして扱われることもあります。
意識しておかないと翌月の支払いが想定外に多くなってしまうこともあるので、注意が必要です。
利用限度額=枠の合計ではないことに注意
クレジットカードの「枠」について紹介してきましたが、カードの利用限度額はこうした枠の合計ではありません。
上の例で説明すると、以下のような利用限度額のクレジットカードがあったとします。
キャッシング枠:30万円
割賦枠:20万円
単純に、3つの枠の限度額を合計すれば、「50万円 + 30万円 + 20万円」 で100万円になりますが、100万円が利用限度枠ではありません。なぜなら、割賦枠の20万円はショッピング枠の50万円に含まれているからです。
そのため、正確な利用限度額は「ショッピング枠50万円 + キャッシング枠30万円」で80万円になります。
利用限度額はどのように決まるのか
利用限度額は、「割賦販売法」と「貸金業法」に基づいて求められた支払い能力と返済能力を元に算出されます。
詳しい算出方法を見ていきましょう。
ショッピング枠の限度額算出方法
ショッピング枠の限度額は、各カード会社の審査により決まります。
審査では職業や年収、住居の状況といった本人の属性や、ローンの有無・これまでの返済履歴などがチェックされます。
割賦枠の限度額算出方法
割賦枠の限度額は、支払可能見込額に0.9を乗じたもの(90%)が上限となり、その金額に基づいてカード会社が設定します。
支払可能見込額とは、貸付を受ける人が無理なく返済できる金額のことです。
「割賦販売法」により、カード会社には支払可能見込額の調査が義務付けられました。
支払可能見込額は、以下の計算により算出されます。
このうち生活維持費は、その人の生計を一にする家族の人数、および住居の費用負担(家賃やローンなど)があるかどうかで決まります。
この支払可能見込額に0.9を乗じたものが、割賦枠の利用限度額の上限です。
最初から「支払可能見込額 × 0.9」が上限になるわけではありません。
上限に余裕があれば、カード会社に利用限度額の増額を申し込んだ場合、「支払可能見込額 × 0.9 」に満たない場合は上がる可能性があります。
支払可能見込額の調査は新規にカードの発行を申し込んだ時はもちろん、有効期限が来てカードを再発行する際にも行われます。
キャッシング枠の限度額算出方法
キャッシング枠の限度額は、「貸金業法」により総額が年収の3分の1を超えない額と決められています。
これを「総量規制」と言います。総量規制が適用されるのは、クレジットカードや消費者金融などの貸金業者から借りる時のみです。
銀行や信用金庫・信用組合からお金を借りる場合や、住宅ローンのような長期・低金利の借入の場合は、年収の3分の1を超えた金額を借りることが可能です。
クレジットカードを利用する場合も、総量規制が適用されるのはあくまで「お金を借りる時」だけです。要するにキャッシング枠には適用されますが、ショッピング枠には適用されません。
利用限度額は変更できる?
ここまで説明したように、利用限度額の上限は割賦販売法、借りられる金額の上限は貸金業法をもとに決まります。
法律に基づき算出された範囲内であれば、利用限度額を変更することが可能です。限度限を上げるだけでなく、逆に下げることもできます。
利用しているカードの限度額を確認するには
利用中のカードの利用限度額は、各社のホームページで簡単に確認することができます。
どこのクレジットカード会社もホームページ内に、ユーザー名やパスワードを入力することでログインできる利用者自身のための専用ページを設けています。
- JCB:MyJCB
- Yahoo!カード:カード会員サービスメニュー
- 楽天カード:楽天e-NAVI
「MyJCB」の手順は、ログイン後に「リボ&分割払い&キャッシング」→「ご利用可能枠の増額」と進むことで、現在の利用可能枠と申し込むことのできる上限額が総額・リボ払い別に一覧表となって表示されます。
Yahoo!カードであれば、カード会員サービスメニューから「ご利用可能枠の増枠」、楽天カードであれば「ご利用可能枠」→「変更する」から、同じように利用限度額を確認できます。
利用限度額(=可能額)の確認より、「増枠」や「変更」としてページを設けているカード会社が多いようです。
カードの利用限度額を増額するには
利用限度額を確認できるページでは、そのまま限度額の変更手続きを申し込めることがほとんどです。
ただし、申し込めば必ず変更できるとは限りません。
割賦販売法により、クレジットカード会社は「支払可能見込額 × 0.9」を超えて限度額を設定することはできません。
具体例を挙げて見てみましょう。
分かりやすいように支払可能見込額を100万円とすると、割賦限度額の”上限”は90万円です。クレジットカード会社は、0〜90万円の範囲内で割賦限度額を設定できます。
仮に、クレジットカード会社が割賦限度額を50万円までに設定していた場合は、上限の90万円までであれば増額の変更が可能です。
クレジットカード会社が割賦限度額を90万円に設定していた場合は、すでに上限の金額であるため、増額の変更は認めらません。
またカード会社によっては継続して増額するのではなく、一時的に利用限度額を増額する仕組みを設けているところもあります。
例えば、3月に海外旅行で普段よりクレジットカードを使う予定の場合、3月のみ限度額を引き上げるといった使い方が可能です。
ただし一時的に上げる場合であっても、継続して枠を上げる場合と同様、審査は必要になります。
利用限度額は減額することも可能
利用限度額の変更は、増額と同様の手続きで下げることもできます。
あえて限度額を下げることのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- カードの利用を抑えることができる
- 不正利用された場合の被害を抑えることができる
- ほかのカードの利用限度額を上げる際、有利になる可能性がある
以下、ひとつずつ解説していきます。
カードの利用を抑えることができる
利用限度額を下げなくてもカードを使わなければ同じことですが、「ついつい使い過ぎてしまう」「使ってしまって後悔する」といったことが多い方にとっては、限度額そのものを抑えてしまうのもひとつの有効な手だてと言えるでしょう。
毎月使う上限を強制的に抑えることにより、収入に見合った支出を考え、計画的にお金を使う習慣を身につけることにもつながります。
不正利用された場合の被害を抑えることができる
カードを紛失・盗難した場合や、フィッシング詐欺、ハッキングによる情報流出など、カードを不正利用されるリスクにはさまざまなものがあります。
もし不正利用が発生した場合でも、カードの利用金額を抑えていれば、被害を少額に抑えることができます。
仮に犯人が目一杯カードを使ったとしても、利用限度額以上には使うことはできません。
特に普段あまり使っていないようなカードがたくさんある場合、そうしたカードの利用限度額を下げておくことは、万一の事態に備えたリスクヘッジとして有効でしょう。
ほかのカードの利用限度額を上げる際、有利になる可能性がある
前述したように、支払可能見込額は割賦販売法によって決まり、さらに貸金業法により、貸りることのできる金額は年収の3分の1となっています。
例えば、2枚のクレジットカードを保有する場合、1つのカードの利用限度額を下げることで、もう1つの利用限度額を上げる際に認められやすくなるかもしれません。
もちろん一概には言えませんが、数字上の可能性としては高くなると言えます。
利用限度額は、勝手に上がる場合もある
カードの更新時など、クレジットカード会社によって再度、審査が行われます。
その審査により、信用度が向上した場合は、申請しなくても利用可能額が増額されることはあります。
前述したように、リスクを避けるためなど増額が不要であれば、下げる手続きをしましょう。
利用限度額は変更できるが、限度は法律で決まっている
- ショッピング・キャッシング・割賦の3つの枠がある
- 利用限度額は、各枠の合計ではない
- 利用限度額はカード会社による審査とともに、法律によっても制限される
- 利用限度額は上げるだけではなく、下げることもできる
クレジットカードの利用限度額は変更できますが、その上限や、借りることができる金額のボリュームは法律で厳密に定められています。
割賦販売法は2008年、貸金業法は2006年に改正され、ともに2010年に施行されましたが、背景には多重債務の社会問題化がありました。
限度額を上げるにせよ下げるにせよ、計画的なお金の使い方に沿ったものにすることが重要と言えるでしょう。